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鞄に辞書までつめこんで2020.06.03

頭ぶよぶよ。

突然だが、私は猫舌ではない。

熱い料理も、出されたままの温度で食べることができる。
 
ファミレスで提供時に伝えられる「こちら、大変お熱くなっておりますのでお気を付け下さい」も、ノープロブレム。
そのままLet’s一口目だ。
 
ずっと、自分は熱に対して無敵だと思っていた。
 
しかしある日、その間違いに気づくときがやってくる。
 
 
 
 
20代後半のことだ。
 
当時働いていた職場でパソコン作業をしていたところ、
後ろを通った同僚が「ナカオちゃん、頭ぶよぶよだけど大丈夫!?」と言った。
 
頭ぶよぶよって何!?
 
人生で初めての表現に戸惑う。
周りにいた人も気になったようで、作業を中断してみんな私の頭に集まってきた。
 
「ほんとだ!ぶよぶよだ!」

だからぶよぶよって何!?!?
 
それぞれの意見を組み合わせたところ
「髪の毛で見えづらいけど、まだらに赤くて、一部の皮膚がぶよぶよになっている」らしい。
 
角度的に自分の目で見ることはできなかったけれど、
促されて触ると、確かにいつもよりやわらかい感じがしなくもない。
 
最近は髪も染めていないし、なぜだろう。
 
思い当たる原因はないのかとしばらく尋問が続くが、イマイチな感じのままみんな作業に戻っていった。
 
 
その日の夜、シャワーを浴びようとお湯を出すと、少し熱い気がした。

頭ヤバイし温度下げた方がいいかな~と考えながらしばらく浴びてみる。
……いやこれ、熱いなんてもんじゃない。めっちゃ熱い!!
ありし日の熱湯コマーシャルレベルで熱い!!やべえ!
 
すっぽんぽんのまま浴室を出て温度を確認すると、設定温度は43度になっていた。
試しに45度に上げて再びシャワーを出すと、まったく同じ温度のお湯がでてくる。
50度でも、体感的には同じ温度のお湯が出てきた。

その瞬間、頭ぶよぶよの原因が判明した。
「これ火傷や!」
シャワーの温度が激アツで頭全面的に火傷していたのだ!
よく見ると太もももめっちゃ赤い!!
 
ちょっと熱いぐらいの温度が好きな私は、
その家に引っ越してからの半年間、
毎日43度設定でシャンプーやらコンディショナーやらを
洗い流していたけれど、恐らく流れ出るお湯は43度ではなかったのだろう。
頭皮が限界を超えて、ぶよぶよになっていたのだ。 
 

ドライヤーで髪を乾かしながら、
「でも何で今まで気づかんかったんやろ」と
思いを巡らしていると、あることに気づく。

そういえば、私は熱いモノを食べたあと、
いつも口の皮がベロベロになっているような。
さらにいえば、熱いモノを飲んだあとはいつも食道が激痛のような。
胃もイテテってなっているような……?
 
!!!!
 
私は熱に対して無敵なのではない。
体はしっかり熱を感じ、きちんと傷ついている。
熱に対する感覚がとんでもなく鈍感なだけだったのだ!!

だからシャワーの温度にも気づかない!
ただのアホでは!?

20年以上も破壊と再生を繰り返させてしまった
口腔内の皮膚や食道や胃の内側たちに対して、
一晩中あやまりたおした。
 
 
翌日からしばらくの間、
同僚から頭をチェックされるのが日課になったが、
記憶が正しければ、一週間ぐらいでぶよぶよはひいたはずだ。

それ以降、私の生活は比較的熱に対して保守的になったので、
もうきっと、頭はぶよぶよにならないだろう。
 
あの日、私の頭に注目してくれた彼にはとても感謝している。
もしあのとき、誰もぶよぶよに気づいていなかったら、
今頃、マジで体の一部が溶けていたかもしれない。 

まあたまにうっかり、
店員さんの「熱いから気をつけろ」という忠告を守らず、
口の中がベロベロになっていることはあるけれども。
 
現在も食道の入口あたりをやらかしており、
食べるものすべてGO!TO!HELL!!状態だけれども。

中尾 奈津子

中尾 奈津子

1988年/大阪府大阪市出身/大阪デザイナー専門学校イラストレーション学科卒業
求人広告業界で約5年間、広告設計やデザイン、コピーワークを手がけ、Rockakuへ入社。得意分野は採用に関すること全般。だるまや信楽焼など、めでたいものが好き。自分もめでたい存在になりたい。

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