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えんぴつころがし2018.01.14

出会いと因果のアクセス解析

 例えば、の話だ。

あなたが今、「ありがてえなあ」と思える状況や、「どうにもならんなあ」と抱え込んでいる課題があったとしよう。
 
そもそも、その「今」とは、いったい、なにでできているのだろうか。
その「今」にあなたを運んだものって、なんなのだろうか。
 
答えはひとつではないだろうが、まあ、それでも、ひとつ、回答めいたものを提示するとするなら、「行動」と「人との出会い」が挙げられるだろう。
 
ここで僕からみなさんにご提示したいのが、表題にもなっている「出会いと因果のアクセス解析」だ。別に、特別なソフトや知識は必要としない。ごくごく簡単な「振り返り」と「紐解き」の視点の話である。
 
手っ取り早く、僕の例で考えてみよう。僕が「ありがてえなあ」と感じている「今」は、とりあえず独立して10年以上を無事に過ごし、経営している株式会社Rockakuもそれなりに順調で、書籍も出せたし、ちょこちょこイベント出演の依頼もいただけたりと、まあ、そんなごくごく些細な「成果」みたいなものだろう。
 
で、ここで、立ち止まってアクセス解析を開始する。
 
そもそも僕はなんで会社なんてものをつくったのだろうか?
ああ、そうだ。最初に雇った初代スタッフMやまくんが「法人化してください」と言ったからだ。
 
じゃあ、Mやまくんと知り合ったきっかけはなんだっただろうか?
そうか、岩沢兄弟(弊社のオフィスデザインを担当している兄弟)のイベントで、僕がトルティーヤつくって配っているときが最初か。
 
じゃじゃあ、岩沢兄弟との接点はなんだったのか?
あー、あれだ。独立当初からジョインしていたディレクション会社のHくん主催の勉強会でパネラーとして並んだからだ。
 
で、Hくんと一緒に仕事をするようになったのは、Hくんの上司であるSさんからの紹介だった。
 
でで、Sさんは、「ころがるえんぴつシリーズ」でもおなじみのシェアハウスの同居人K氏に引き合わせてもらった人だ。
 
ででで、K氏は元々、同じく「ころがるえんぴつシリーズ」に登場する犬養(偽名)の友だちだった。
 
でででで、犬養は、犬養の中学時代の同級生が、僕の高校の同級生という、いささかわかりにくい接点から知り合った。因みにそのダブル同級生はラッパーのYくんで、Yくんのクラブイベントで出会ったのが犬養だった。というわけか。
 
20年もの時を遡って、犬養のヤロウがキーマンだったりする可能性に気づくのはなんかイラッとくるけれど、あなおそろしや、あの20年前の6月の夜、不慣れなクラブイベントなんぞに行かずに、アイツとも知り合ってなかったら……もしかしたら株式会社Rockakuを中心とした僕の愛すべき「今」は、全く別のものになっていたのかも知れないのだ。
 
「あの日 あの時 あの場所で 君に会えなかったら僕等は いつまでも 見知らぬ二人のまま」と歌ったのは小田和正だったけれど、まさしく、今、あなたが「明日の飲み会微妙だなー」とか思っている先の「行く/行かない」の判断が、20年後の大きな変化の導線を繋いでいることだってあり得る。
 
この話は、別に思い出話だとか、人との出会いの大切さをかみしめるために提示したものではない。
 
前向きな行動も、後ろ向きな怠慢も、いいやつとの出会いも、面倒くさい人間との対峙も、あるいは、SNSに書き込んだダジャレだとか、スケボーでの転倒とか、飲み過ぎによる宿酔いですらも、あなたをこの文章を読んでいる「今」に導いているのだろうし、また、この先、とんでもない未来へと運んでしまう可能性がある。
 
僕はただ、そのことを無責任に示唆したかった。(おい)
 
あなたの愛する「今」、あるいは打破したいやっかいな「今」は、どんな出会いと因果を伝ってできあがったのか。それを解析してみることで、なにかしら見えてくることがあるかも知れない。

森田 哲生

森田 哲生 | Rockaku代表

1978年/東京都八王子市出身/多摩美術大学美術学部芸術学科卒業
編集プロダクション、広告制作会社などを経て2007年に独立。Rockaku事務所を立ち上げる。コピーワーク、CI計画、コンセプトワークなどを中心に手がけつつ、企業のアドバイザーやセミナー講師などとしても活動中。得意分野は住宅、士業、ネーミングなど。

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