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えんぴつころがし2015.11.13

「制作会社の安定」と、「個人の成長」の間にあるジレンマ

連投するときは連投しまくる森田です。
この勢いで書籍(2016年2月発売予定)の原稿を書けよ!
というセルフツッコミは置いておいて、今回は制作会社の構造の話をちょっと。


僕は社会に出てから独立するまでの約6年間で
3社ほど「制作会社」という業態で働いていました。
制作会社の定義は色々ですが、基本、制作をする会社です。


で、この制作会社というものを、いつの間にか自分が経営する立場になって、
(Rockakuが制作会社なのかどうかはよくわからないけどね)
制作会社を安定させる方法と、所属するクリエイターたちを成長させる方法って、
極めて相性がよくないというか、
合理的には交わりにくいってことに気づいてしまったんですよ、おくさん。


ある時期、僕が働いていたB社は、
大手旅行代理店のパンフレットなどを一手に制作する、
単一業務に特化した制作会社でした。

つまり、入ってくる仕事の量と売上げの見通しが立てやすく、
経営が非常に安定している会社。
SARSや9.11などの事件で旅行業界が危うくなる状況をのぞいては非常に羽振りがよく、
勤怠時間をオンライン管理して、分単位で残業手当を払ってくれるほどでした。

しかしまあ、この経営手法は、明らかに「会社の安定」を目的に設計されています。
僕も一応は経営者なんで、その構造は今ならはっきりわかりますし、
それが悪だとも思いません。が、この経営手法をとる制作会社では、
大量に人が辞めていくんです。

それでもその制作会社は安定し続けます。
実際、人が抜ければ現場レベルでは色々苦労もあるでしょうが、
会社にとっては誰が働いていても、ぶっちゃけそんなに関係ないわけです。

これは、組織の構造としてはすげえ完成度が高いんですが、
社員個人、とりわけ制作業に携わる職業クリエイターの成長にはあんまりよい作用がありません。

半分持論、半分一般論くらいで言いますが、
職業クリエイターの成長のキモは、「変化」と「対応」です。
現場のディレクターや、デザイナー、コピーライターなどのメンバーが変化しないことも、
クライアントが変化しないことも、僕に言わせれば(持論じゃん)、
思考や適応力の硬直化を生み出してしまします。

で、僕はこの「制作会社の安定」と、「個人の成長」について、
いま、どんなことを考えて経営をやってるかというと、
全く迷うことなく、「制作会社の安定」をばっさり切り捨てています。
まあ、3人しかいないんで、B社の1部署より小さいからできる経営手法だとも言えますが。

まず、どんなに大きな割合でも、年間の売上げの20%以上を占めるクライアントを持ちません。
それから、得意な分野は持っても、専門特化した分野は持ちません。
あと、社内にはコピーライターしか所属させません。

つまり、クライアントも、案件の種類も、制作チームも、
毎回がらっと変わるように、常に変化の中に身を置けるように設計しているわけです。


安定より変化を選択して、という状況をつくり、
成長 or DIE!」な状況をつくる。
プレイヤー集団として会社を育てようと決めた、
僕なりの逆説的成長戦略がここにあったりします。

まあ、零細企業のタコ社長が何を偉そうに・・・という向きもあるでしょうが、
そんな見方もあるっすよ・・・みたいなお話でした。

森田 哲生

森田 哲生 | Rockaku代表

1978年/東京都八王子市出身/多摩美術大学美術学部芸術学科卒業
編集プロダクション、広告制作会社などを経て2007年に独立。Rockaku事務所を立ち上げる。コピーワーク、CI計画、コンセプトワークなどを中心に手がけつつ、企業のアドバイザーやセミナー講師などとしても活動中。得意分野は住宅、士業、ネーミングなど。

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