Journal

えんぴつころがし2016.04.06

商売の基本は『大航海時代』が教えてくれた

元々、持ちネタではあるんですが、改めて文章にしたためてみたいと思い、筆を執ります。

僕は、極小ではありますけど、会社の経営をやってまして、
それはまあ、一応、トップセールスを兼務している状況でもあったりします。

正直、Rockakuは、こういう分野で、こういう規模では、
それなりに営業が上手く行っている会社ではある。という自負もあり、
フリーランス時代含めて9年間、売上げが前年度を割ったことは1度もありません。

でも、僕自身は独立以前、営業経験はおろか、見積すらつくったことがない、
商売のしょの字も知らないど素人でした。
まあ、今もビジネスマンとしては微妙かも知れませんけどね。


そんな僕が、それでも商売をしなくてはいけなくなったのは、
今を去ること8年前。当時務めていた制作会社を逃亡したときからでした。
その辺りの話はnoteにて不定期連載中

別に業界に強力なパイプがあるわけでもないし、
わかりやすくアワードを獲っていたわけでもないし、
会社員時代の顧客がいたわけでもない僕が、
それでもなんとかスタートを切れたのは、
当時、コピーライターがほとんどいない領域だったWEB業界から、
仕事を受ける流れをつくれたからだと思います。

時は2007年。Flash全盛期で、CMSがすげえ普及した時期でもあります。
WEBサイト制作の主役はWEBデザイナーで、僕らが出る幕なんてなさそうでした。
でも、実際はそうじゃなかった。

カタログ、パンフレット制作で培ったページ構成技術と、
チラシなどで鍛えた情報整理やレイアウト技術、
そして何よりもコピーライティングのスキルを組み合わせることで、
サイトマップ+ワイヤーフレーム+全ページの原稿をセットでつくるという
ワークモデルが完成し、それでそこそこ稼げるようになりました。

それ以降も、僕は、広告代理店のオフィスに席をもらったりしつつも、
「コピーライターがほとんどいない領域」を主戦場に仕事を増やしてきました。

で、あるときから、この戦い方が何かに似ている・・・と思いはじめました。
よくよく記憶を掘り返していくと、中学生時代に遊んだ、
『大航海時代』というゲームに辿り着いたんですよ。

あのゲームは、基本的に「貿易」か「探検」を主軸に進みます。
僕がよくやっていたのは「貿易」の方で、
絨毯の産地で絨毯を安く仕入れ、胡椒の産地に行って売りさばき、
その差額で胡椒を限界まで買い込んで、また絨毯の産地に戻って胡椒を売る・・・
と言うルーチンでした。
因みにこの繰り返しだけで、一国の宰相の座を金で買いました。

この体験から学んだのは「絨毯の産地で絨毯を売るヤツはバカである」ということ。
「貿易」っていうのは、場所を移動することで、ものの価値を高める行為なんですよね。

つまり、「コピーライターがほとんどいない領域」を選んだのは、
正に僕にとっては「技術の貿易」そのものだったんです。

もちろん、同業者がほとんどいない=現状は仕事があまりないということなんですが、
丁寧にお客さんの求めるモノを探っていき、それに答える価値をプレゼンしていけば、
それなりに成り立つことがわかってきた。

同時に、そもそもコピーライターについての説明が必要ない広告業界とはちがい、
常に自己説明が求められる現場に身を置くことで、僕はいろいろな説明の仕方を学び、
価値の示し方を身につけることができました。

現在も僕の「貿易」と「航海」は延々と続いています。
おかげさまで、心強いクルーたちもこの船に乗り込んでくれました。

実際、日々、僕のイメージを超えるような予想外の分野のお客さんたちから、
エキサイティングなお仕事の依頼が舞い込んでいます。

業界内で評価されたい。同業者にちやほやされたい。
そんな気持ちもよくわかりますが、コピーライターに限らず、
この「貿易」という視点で営業に臨んでみると、
案外、面白いことになるんじゃないかなと、
無責任なスタンスでおすすめしてみたいと思う次第です。

森田 哲生

森田 哲生 | Rockaku代表

1978年/東京都八王子市出身/多摩美術大学美術学部芸術学科卒業
編集プロダクション、広告制作会社などを経て2007年に独立。Rockaku事務所を立ち上げる。コピーワーク、CI計画、コンセプトワークなどを中心に手がけつつ、企業のアドバイザーやセミナー講師などとしても活動中。得意分野は住宅、士業、ネーミングなど。

  • twitter
  • facebook

Back Number

えんぴつころがし バックナンバー